長引くせき
「せき」は、患者が病院を訪れる頻度の最も高い疾患です。英国では全人口の10~15%が毎日咳嗽を訴え、米国では年間100億円以上の医療費が「せき」の治療のため費やされています。咳嗽の原因となる疾患が予後良好であっても、日に何度も頻回に長期にわたり「せき」を繰り返すことは、大きなエネルギーの消費となり生活の質が低下するのみならず、周囲の人々に多大な悪影響を与える場合もあります。
「せき」は、その持続する期間によって、3週間以内の急性咳嗽、3~8週間の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽に大別されます。急性咳嗽の原因の多くは呼吸器感染症による「せき」です。その中でも上気道のウイルス感染によるかぜ症候群の頻度が最も高く、多くの場合、特に治療を行わなくても自然治癒します。その後、「せき」の持続期間が長くなるとともに、非感染性疾患を原因とする遷延性・慢性咳嗽の頻度が増加します。
「せき」を止めるには
わが国における遷延性咳嗽・慢性咳嗽の3大原因疾患は、咳ぜん息、アトピー咳嗽及び副鼻腔気管支症候群であり、いずれも治療法が異なります。長引く「せき」で来院される患者さんの特徴として、前医で一律的に抗生物質、咳止め薬、去痰剤の投薬を繰り返されている場合が非常に多く見受けられます。「せき」を止めるにはその原因疾患を特定することが非常に重要です。そのために患者さんの臨床症状・身体所見のみならず、必要に応じて胸部レントゲン検査・呼吸機能検査・アレルギー検査等を行い、適切な治療法が選択されます。以下に原因疾患別の治療法の一例を示します。
原因疾患 | 治療法 |
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咳ぜん息 | 気管支拡張薬・吸入ステロイド |
アトピー咳嗽 | 吸入ステロイド・抗ヒスタミン剤 |
副鼻腔気管支症候群 | マクロライド系抗菌剤・去たん剤 |
かぜ症候群後遷延性咳嗽 | 経過観察・吸入ステロイド・漢方薬 |
慢性気管支炎・COPD | 禁煙・抗コリン薬・気管支拡張剤 |
気管支ぜん息 | 吸入ステロイド・気管支拡張剤等 |
喉頭アレルギー | 抗ヒスタミン剤・吸入ステロイド |
百日咳 | マクロライド系抗菌剤・鎮咳剤 |
マイコプラズマ感染症 | マクロライド系抗菌剤・鎮咳剤 |
肺炎クラミジア | マクロライド系抗菌剤・鎮咳剤 |
気管支結核 | 抗結核薬 |
間質性肺炎・肺線維症 | 対症療法 |
胃食道逆流 | プロトンポンプ阻害薬 |
アンギオテンシン変換酵素 阻害薬による薬剤性咳嗽 |
原因薬剤の中止 |
心因性・習慣性咳嗽 | 心療内科的治療 |
肺癌 | 癌に対する治療 |
東京都大気汚染医療費助成制度
東京都ではぜん息患者さんを対象に、医療費の助成を行っています。以下の要件をすべて満たし助成を希望さる方はお声がけください。
- 1. 18歳未満の方(18歳の誕生日が属する月の末日までの間にある方を含む)
- 2. 都内に引き続き1年(3歳未満の方は6カ月)以上お住まいの方(住民登録されている方)
- 3. 現に気管支ぜん息・慢性気管支炎・ぜん息性気管支炎・肺気しゅにかかられている方
- 4. 健康保険等に加入されている方
- 5. 申請日以降喫煙しない方
*いずれの要件も満たしていることが必要です。都外に転出された方は助成の対象ではなくなります。
平成30年4月1日から、1カ月6,000円まで自己負担になります。
対象となる方 | 認定を受けて医療券をお持ちの方のうち、生年月日が平成9年4月1日以前の方。 |
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月額自己負担限度額 | 6,000円(月額) |
適用方法 | 同じ月に払った医療費(入院・外来・薬局)を全て合算し、6,000円を超える部分を助成します。 |
制度の利用方法 | 健康保険証・医療券と一緒に自己負担限度額管理票を窓口で提示して下さい。 |